八尾市 賃貸を掲載
ガンの予防のためには農薬の有無を気にするよりも、脂肪のとりすぎや野菜不足を避け、タバコをやめるように勧め、行政や研究機関に対しては天然化学物質の危険性評価に力を注ぐべきだと提唱しているのである。
指摘する以前から、現実に農薬とつき合っている関係者のあいだでは「常識」であった。
とはいっても、このあたりまえのことを意外に感じる人も多いかもしれない。
しかし、食品残留農薬がそれを食べた人間に実害を及ぼしたことが、かつて(さしあたっては「いまのところ」と考えてもらってもよい)一度もないことを挙げれば、予断と偏見のない人には納得してもらえるのではないだろうか。
サリドマイドのあざらし症やキノホルムのスモン病など、医薬品には明らかに「前科」があることとくらべると、これはすごいことのように思える。
では、なぜ実害皆無でありえたかというと、けっして農薬の毒性が医薬のそれより低かったとか規制がより厳しかったとかではなく、私たちがふだん摂取している残留農薬の量は、まちがってもきわめて微量であるということに尽きるだろう。
農薬そのものを取り扱っているときの微量ではすまない曝露による事故は、古くはかなりの数にのぼり、いまでもゼロではないのだ。
あらためて言うまでもないが、すべての薬は毒であり、ほとんどの場合、逆もまた真である。
いや、ほとんどではなく、つねに逆も真であって、一部の毒については薬としての利用法がまだ発見されていないだけなのかもしれない。
ときどき、農薬は農毒薬の略だといって、さも農薬を批判したようなつもりになっている人がいるが、そんなことは批判でもなんでもない。
明らかに農薬は農毒薬、医薬は医毒薬であり、どんな毒を何に対して、どんな用量で使うかによって農薬になり医薬になる。
念のために言うと、農薬は基本的には作物にとっての医薬なのである。
もっとも、医薬品も農薬も法律上の毒物や劇物には該当しないものが多いし、日常的な「毒」の語感になじまない毒性物質はいくらでもある。
だが、日常感覚の毒とはなんだろうか。
急性毒性の強さの指標として用いられるLD別(半数致死量)という数値がある。
化学物質を動物に投与して試験群の半数が死亡する量を、体重一キログラム当たりのミリグラムで表わしたものだ。
当然、数値が小さいほど急性毒性は強い。
LD別は、実験動物の種類によって、また経口、経皮、吸入、皮下や静脈への注射といった投与経路によっても異なるが、ラットの経口投与の場合でいうと、たとえば青酸カリ10、カフェイン1911、アスピリン1000、食塩3000、砂糖119700である。
量しだいですべての物質が毒になる。
さすがに澱粉の数値がないのは、誰もやってみなかったか、半数致死量が大きすぎて投与不能だったかのどちらかだろう。
そういえば、夜露の経皮毒性、たけしの毒舌の経耳毒性、アラーキーの写真の青少年に対する経眼毒性なども測定されていない(ナニ?)。
法律(毒物及び劇物取締法)では、LD別が50以下を毒物、300以下を劇物の目安にしているが、食塩も体重50キログラムの人が一度に150グラム摂取すると半数が死ぬ「毒性」をもっている。
しかし、日常感覚ではアスピリンはクスリ、食塩は調味料であって毒ではない。
お茶がカフェインという「毒入り」飲料だとは誰も思わない。
量しだいではあらゆる物質力毒になるが、農薬は作物にとっての医薬であるところが、農薬には食塩より急性毒性が低いものがたくさんあるのに、物質名が特定されることもなくすべて毒である。
つまり、日常レベルでは、毒と意識されるものが毒である、というみごとなまでのトートロジーが完成し、実際には何も意味していないことになる。
しかしまあ、食品に残留する分に限っていえば、農薬の急性毒性は問題になるまい。
農薬を不安がる消費者が気にしているのは、慢性毒性や発ガン性、催奇形性、繁殖毒性のほうである。
ところが、そういう毒性についてある意味では医薬品以上に厳しく安全性をチェックされている化学物質、それが農薬なのだ。
無視できる危険と「安全」性農薬の慢性毒性試験は、ラットおよびイヌを実験動物として行なわれ、マウスでも発ガン性と併せて慢性毒性が試験される。
ラットはほぼ生涯、イヌは一年間、マウスは一年半、群ごとに農薬量を定め、エサに混ぜて毎日与えながら飼育する。
飼育中は体重の変化や行動、健康状態を観察し、飼育期間終了後は解剖して体組織の顕微鏡検査や血液の生化学検査を行なう。
こうして、生涯にわたって毎日摂取させても動物の体になんら影響を与えない薬量を求める。
この最大無作用量をヒトに当てはめる場合には、動物種による違いを考えて最低100の「安全係数」を掛ける。
人間が生涯、毎日食べ続けても安全な量は動物のNOELの百分の一(以下)とされるわけで、これを一日摂取許容量という。
ADIは体重一キログラム当たりのミリグラムで得られる。
日本では個体の体重を50キログラム(欧米では60キログラム)として一人が一日に摂取しても安全な量を計算する(ADI×50)。
次に、その農薬が用いられる作物を日本人が一日にいくら食べるか厚生省国民栄養調査に準拠して算出する。
この適用作物摂取量に残留する農薬の総量がADI×50(ミリグラム)以下、通常はめいっぱいではなく、ADI×50の70パーセント程度になるように、作物(群)ごとに残留許容量(残留基準、登録保留基準)が設定される。
一方、実際に農薬が使用される農作物を二カ所以上の圃場で使用濃度、時期、回数を変えて栽培し、収穫物中の残留分析を行ない、残留量が許容量内に余裕をもって納まるように使用時期と総使用回数を決める。
これを安全使用基準という。
ところで、残留許容量が残留基準と登録保留基準の二本立てになっているのは、食品衛生法と農薬取締法の両方がかかわるせいである。
一部の農薬については、厚生省が食品衛生法に基づいて作物ごとに残留基準を定めている。
残留基準がないものについては、環境庁が農薬取締法に基づいて作物群ごとに登録保留基準を定める。
登録保留という言葉は、許容量を超えて残留する場合は、農薬としての登録が保留され、販売も使用もできないところからきている。
先行した食品衛生法の側からいうと、法の細部の不備を農薬取締法が補い、農薬取締法の側からいえば、食品衛生法に残留基準があるものは、その基準値を登録保留基準として援用するという関係だ。
ともあれ、残留濃度が基準値以下なら安全である、とするのが食品衛生法や農薬取締法の思想である。
正確に言えば、これは「安全」ではなく「無視できる危険」かもしれないが、両者は事実上同じだと考えなければ無農薬食品でも食せるものはなくなるし、呼吸もできなくなるのではないか。
なお、従来は残留基準が設定されているのは53の農産物に使用される26の農薬しかなく、登録保留基準のほうは基準オーバーが発見されても出荷停止などの制裁措置がないこと、輸入農産物の輸送・保管時に防虫や防カビなどのため収穫後適用される、いわゆるポストハーベーストが「野放し」になっていることが問題になっていた。
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